成年後見・財産管理
1.成年後見制度について  2.任意後見制度について

1.成年後見制度について

 成年後見という用語は未成年者後見に対比して用いられるようになったものです。
 この言葉が使われ始めたのは比較的新しく、せいぜい十数年くらい前からのことなので一般の人が知らなくても無理のないことです。
 では、成年後見制度とはどのような内容のものなのでしょうか。

@あたらしい理念

 成年後見制度とは、一口で言うならば保護を要する成年者に対する新しい理念を持った援助の制度である、ということができます。何が新しい理念なのかといえば、ひとつは
ノーマライゼーションの確立です。ノーマライゼーションというのは、みなさんもご承知のように障害者だ高齢者だということで特別視することなく、みんな我々の仲間として一緒に共生しできるだけ社会的な行事にも参加させて、普通の人と同じノーマルな生活を送ろうということを意味します。これは、北欧で60年代に主張され、欧米ではすでに定着している考え方です。
 もうひとつは
自己決定権の尊重です。自己決定権の尊重とは別の言葉で残存能力の活用ともいいます。たとえ痴呆の進んだ人であっても人格はあるわけですから少しでも能力がある限りその人格の発する自己決定を可能な限り尊重していくという考えです。
 このような新しい理念と従来からの本人の保護の理念とを調和させるべく2000年(平成12年)4月から民法が改正され、新しい法律も制定されたのです。

A三つの類型

 まず、民法の改正の方では、従来使われていた禁治産、準禁治産という用語を廃止して以下のように後見類型、保佐類型とし、さらに新たに補助の類型を設けて今までの準禁治産者よりも軽度の痴呆や精神的障害にも対応できるようにしています。また、判断能力の程度についても心身喪失や心身耗弱という用語を使わずに、事理を弁識する能力を欠く、とか、著しく不十分という表現を使用しています。
 
後見類型(禁治産の改正)・・・事理を弁識する能力を欠く場合
 
保佐類型(準禁治産の改正)・・事理を弁識する能力が著しく不十分な場合
 
補助類型(新設)・・・・・・・事理を弁識する能力が不十分な場合

Bその他の改正

ア 
法人・複数成年後見人制度の導入

 従来は、後見人は個人しかなりませんでしたが、これからは、個人だけでなく法人でもなることができるようになりました。また、本人一人に対して複数人の後見人を選任することもできるようになり、財産管理部門は法律の専門家が担当し身上監護部門は福祉関係者が担当するということも可能となりました。

イ 
配偶者法定後見人制度の廃止

 配偶者が居る場合には当然に配偶者が後見人となる制度を廃止したことにより、80歳の夫の世話を80歳の妻が後見人となってしなければならないというような不合理なことはことはなくなりました。

ウ 
戸籍に代わる登記制度の創設

 旧制度では、禁治産や準禁治産宣告がなされるとその旨が戸籍に記載されることになり、これが制度の利用を躊躇させていた大きな要因の1つでもありました。そこで、戸籍への記載に代えて成年後見登記制度を創設し、プライバシー保護の要請の観点から請求権者を一定の者に限定して代理人等の資格証明書を交付する方式を採用することにしました。これで、戸籍のときのようにたまたま別の目的で戸籍をとったときにも宣告の事実が分かってしまうというようなこともなくなり、今までの弊害は除去されたことになります。

 以上が法定後見制度に関する主な改正点ですが、今回の改正では本人の自己決定をより尊重する制度として、
任意後見制度に関する新法が作られることになりました。


2.任意後見制度について

 任意後見制度とは、正式には公的機関の監督を伴う任意代理制度のことを言います。非常におおざっぱな言い方をしますと、遺言は自分の死んだ後の財産の処分方法などを自分で決めておく制度なのに対し、任意後見制度は、痴呆などで判断能力が落ちたときに自分の財産を誰にどのように管理してもらうかなどを元気なうちに自分で決めておく制度と言えます。その具体的方法は、次の通りです。

@
任意後見契約(公正証書)の締結

 まず、あらかじめ自分の意思で任意後見人になってもらう代理人(これを
任意後見受任者といいます。)を選任します。任意後見人には誰でもなることができます。次に、将来自分の判断能力が低下してきたときに財産管理や介護・医療などに関してやってもらいたい具体的内容について、任意後見受任者と委任契約(任意後見契約)を結んでおきます。このときに将来支払うことになる報酬も決めておくことができます。また、この任意後見契約は、公正証書で作られ、自動的に登記も為されることになっています。

A
任意後見監督人の選任

 任意後見受任者は、数年後あるいは数十年後になって、本人の判断能力が著しく低下してきたなと判断したときは、家庭裁判所に対して自分のこれからの職務を監督する任意後見監督人を選任してもらうよう申請します。家庭裁判所はこの申請に基づいて任意後見人の職務を監督する任意後見監督人を選任し、このときから初めて、任意後見人は本人と契約した内容の後見事務が行えるようになります。したがって、任意後見人が勝手に後見事務を行い始めるようなことはありません。また、任意後見監督人の選任には原則として本人の申し立てや同意を得ることが要件となっているので、本人も納得したうえで財産管理などを任せることができるというわけです。

このように、任意後見制度こそが、
本人の保護と自己決定権を尊重した画期的制度であるといえましょう。
 ただ、この任意後見制度が有効に活用されるためには任意後見人となる者やあるいは任意後見監督人となる者の供給がスムーズに行われるためのシステムの存在と人的資源の確保がなされていなければなりません。
 そのため、司法書士会は、「
社団法人成年後見センター・リーガルサポート」を設立して、成年後見等の家庭裁判所への推薦や指導監督を行っています。
 司法書士は、この任意後見人となって高齢者や障害者の方々の
財産管理や身上監護の事務を行うことにも応じています。また、成年後見制度や任意後見制度に関するあらゆる相談に応じておりますので、いつでもお気軽にお電話下さい。



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