民事裁判手続
1.本人訴訟は司法書士訴訟でもある  2.司法の文字が似合う代理人へ

1.本人訴訟は司法書士訴訟でもある

 司法書士には、登記とは別に重要な職務があります。それは裁判所や検察庁に提出する書類を本人に代って作成することです。裁判を起こすための訴状や裁判を起こされたときの答弁書の作成はもとより、調停や破産民事再生の申立から、離婚財産分与遺産分割後見申立といった家事審判手続、さらには差押えなどの強制執行手続、仮差押え仮処分などの保全手続など、およそ裁判所に提出するあらゆる書類の作成を行ないます。
 言うまでもないことですが、日本では、全ての民事上の裁判は原則として本人自らすることができることになっています。そもそも書面を出すだけで済ませることができる性質の裁判手続きも少なくありません。
 けれども、裁判手続は専門的な知識や能力が要求される場合が多いのも事実です。特に、証人尋問などで法廷で自ら弁論する必要がある場合などは弁護士に依頼したほうが良い場合が多いでしょう。
 また、弁護士費用等の関係から自分で裁判を行ないたいと思っても、裁判所に提出する書面についてはやはり専門的な知識に基づいたものを提出しなければならない場合が多いのも現実です。
 このような場合に登場するのが私たち司法書士です。司法書士は、あなたの主張したい内容を整序し、その専門的知識を駆使して裁判所に提出する書類をあなたに代って作成することにより、あなた自身で行う訴訟(本人訴訟)を側面から支援しているのです。このように弁護士を付けないで自分で行う裁判は実際にはかなり多く、平成13年の司法統計でも、地方裁判所では60%以上が、簡易裁判所に至ってはなんと98%以上が原告及び被告の双方かどちらか一方が本人単独での訴訟であるとの数値が出ています。司法書士はその全ての裁判の書類作成に関与しているわけではありませんが、かなりの割合で関与していることは事実であり、この事実が、本人訴訟は司法書士訴訟であるとも言われる所以なのです。


2.司法の文字が似合う代理人へ

 さて、日本国憲法は、何人に対しても裁判を受ける権利を保障しています。しかし、現実には身近に法律相談をするところがないことや訴訟の代理人となる人がいないなどの理由から、正当な権利を行使できずに泣き寝入りしてしまうケースもまだまだ多く見受けられるのも事実でしょう。
 このような状況の下、平成11年7月、「21世紀の我が国社会において司法が果たすべき役割を明らかにし、国民がより利用しやすい司法制度の実現、国民の司法制度への関与、法曹のあり方とその機能の充実強化その他の司法制度の改革と基盤の整備に関し必要な基本的施策について調査審議する」(司法制度改革審議会設置法)ことを目的として、内閣の下に司法制度改革審議会が設置されたことは、ご承知の通りです。
 同審議会は2001年(平成13年)6月12日、そこでの2年間にわたる審議の結果を内閣総理大臣に対し最終意見書として提出しましたが、その意見書のなかで、「訴訟手続きにおいて、隣接法律専門職などの有する専門性を活用する見地から、司法書士への簡易裁判所への訴訟代理権については、信頼性の高い能力担保措置を講じた上で、これを付与すべきである。また、簡易裁判所の事物管轄を基準として、調停・即決和解事件の代理権についても、同様に付与すべきである。」との提言がなされました。
 そして、この提言を受け、司法書士に簡易裁判所における民事訴訟代理権を付与する内容を骨子とする司法書士法の改正が行われ、2003年(平成15年)4月1日から実施されることになったのです。ただし、この訴訟関係代理業務は、全ての司法書士が行うことができるのではなく、法務大臣が指定した研修を終了し、認定を受けた司法書士に適用されるものであることを予めお断りしておきます。もちろん、当事務所の司法書士岩井英典も後藤力哉も訴訟代理権を行使できる認定司法書士です。
 この司法書士法の改正によって新たに認められた訴訟関係代理業務の範囲は大きく2つに分けることができます。
 一つは、簡易裁判所における様々な手続きについて代理することです。
具体的には、請求額が簡易裁判所の事物管轄(2004年4月1日より140万円以内)を基準とする民事紛争における、

 @ 訴えの提起前の和解(即決和解)の手続
 A 支払督促の手続
 B 証拠保全の手続
 C 民事保全の手続
 D 民事調停の手続

などの民事訴訟手続(少額訴訟手続を含む)があげられます。これらの手続きでは、司法書士は当事者の代理人となって裁判所に出向き、法廷において弁論を行なうことはもちろんのこと、証拠調べ証人尋問)や和解仮差押え仮処分などを含めた様々な裁判上の手続きを行うことが出来ます。(但し、上訴の提起、再審及び強制執行に関する手続きは除かれます。)
 二つは、裁判外における和解の代理や相談に応ずることです。
 具体的には、裁判外において当事者の代理人となって内容証明による催告や示談交渉を行ったり和解に応じたりすることなどです。
 現実の社会においては、法的紛争の全てが裁判となるわけではないのは当然でしょう。むしろ裁判になる前に当事者間で解決される紛争の方が多いくらいでしょう。ただ、このような裁判外で紛争を解決させようとするときは、やはり相当程度の法的知識を持って交渉しなければならないでしょうし、知識は持っていてもこのような交渉すること自体が不得手な人も少なくないと思われます。
 司法書士は、このような場合においても本人の代理人として様々な手段を使って交渉を行ったり、あるいは紛争性のある事案について法律相談を受け、より適切なアドバイスをすることもできることになったのです。
 このように、司法書士制度は、登記手続の代理人となって登記の専門家への道を歩き続けたのち、今度は簡易裁判所での代理人活動という、司法の文字が似合う場での職務を担う制度へと進化したともいえましょう。
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